先日の『インプロの意味を理解しよう!即興力は人生を変える』という記事で、インプロの意味を説明し、即興が俳優やビジネスマンに役に立つ理由を解説しました。
今回は、インプロに興味を持った方で、特にインプロの研修やワークショップを検討している人に向けた注意点を書こうと思います。
なぜなら、日本国内のインプロ団体には、問題を抱えていないとは言えない団体も多く見受けられるからです。
しっかりと、組織(講師)の質を見て研修の依頼しないと、後悔する可能性が高いです。
研修を申し込む前には、インプロ団体の『商標』を確認!
さて、少し話題は飛びますが、2016年6月、青森県にある『弘前』という地名が、中国で商標登録されていた事がわかりました。
なので、現在、青森県弘前市は、今後のトラブルを恐れて、登録差し止めの準備をしているそうです。
実は、日本国内のインプロ団体でも、それに近い悪質なトラブルが起きています。
日本では『インプロ』という言葉が商標登録されている!?
日本のインプロ関連の団体の多くは、他団体との差別化を図るため、研修などの際に使用する言葉を商標登録しています。
そして、中には『インプロ』という言葉自体の商標権を、所有していると主張する団体もあるのです。
そういう団体は古くからあり、2005年に書かれた、こんなブログもありました。
インプロといえば、、、「インプロ」を日本のとある特定一団体が商標登録しようとしている動きがあるとかないとか、、、
ここまで読んで、『そもそもインプロって言葉自体を、商標登録できちゃう人がいるの?』という違和感を覚えて人もいるでしょう。
その感覚は正しく、インプロという言葉は、一般的な言葉なので、商標登録はできないのです。
『インプロ』を商標登録できない理由
インプロという言葉は、インプロビゼーション(即興演劇や即興演奏の意味)の略語です。
この様に、辞書にも登場しています。
辞書に載っている言葉でも商標登録は可能ですが、業界で一般的に使われる言葉の場合は、登録ができません。
弁理士事務所ラブラドールの説明に、こういう場合の具体例が出ていたので引用します。
「クロワッサン」って、ある特定のパンの種類の名称ですよね。
これを商品「パン」の商標として使っても、どのパン屋の商品か区別できません。
だから、指定商品を「パン」として商標「クロワッサン」は商標登録されない。
でも、指定商品を「自動車」として商標「クロワッサン」を出願すれば、商標登録される可能性はあります。
自動車の業界で「クロワッサン」は一般的に使われていないからです。
要するに、iphoneで有名なAppleは果物農家ではないので、Appleという言葉を商標登録できました。
ですが、演劇・演奏というカテゴリーの中にある、『インプロビゼーション(即興演劇・即興演奏)』という言葉を、演劇関連に使う目的で商標登録する事はできないのです。
では、『インプロ』を、インプロビゼーションの略語として登録するのはどうかというと・・・?
(登録できない商標の例)
略 称…商品「パーソナルコンピュータ」について、商標「パソコン」
サービス「損害保険の引受け」について、商標「損保」引用元:商標登録の専門サイト
この様に、『インプロ』とう言葉は、どう転んでも商標登録できない言葉なのです。
商標の確認作業は、ネットで一瞬!
でも、誰かが『私はインプロという言葉の商標を持っているんだ!!!』と強く主張したら・・・?
『そんなに言うなら、そうなのかな〜』って思ってしまいそうになりますよね。
ですが、安心してください!
商標はネットで簡単に調べられるんです。
国の機関が運営している商標の検索サイト
全く聞きなれ無いと思いますが、工業所有権情報・研修館という独立行政法人があります。
実は、そこが特許庁のデータを元に商標を検索できる、ウェブページを運営しているのです。
使い方は、グーグルやyahooで検索するように、商標があるかどうか気になる言葉を入力して検索ボタンを押すだけ。
実にカンタンですね!
こんなに簡単に検索できる時代になった今、仮に『商標を持っている!』と嘘をついた人がいたとしても、バレバレです。
インプロ研修などに使える商標登録されてる言葉
では、現時点で登録されている、インプロ関連の商標を見てみます。
商標には様々な権利の区分があるので、インプロの研修などに使える区分に登録してある言葉は次の4つだけでした。
- コンセプトインプロ
- 営業インプロ
- インプロビジョン
- インプロセラピー
『インプロ』という言葉自体の商標登録は無理なので、インプロに言葉を加えた造語のみが登録されています。
その他に、インプロではなるべく相手のアイデアを受け入れるために、受け答えは『No』ではなく、なるべく『Yes, and』と答えようという考え方あります。
そのためか、『イエスアンド』という言葉が商標登録されていましたが、2016年6月で期限切れになっていました。
さて、商標を登録するという事は、消費者が他社との区別を確実に行えるようにするのが商標の本来の目的です。
ですが、ここに並んでいる商標登録されている言葉の一部は、そういう目的というよりはむしろ・・・?
後からインプロ関連でビジネスを行う人の訴える事が出来るようにするために、商標を取得しているような印象を受けます。
そういう発想は、青森県の地名『弘前』を商標登録した中国人にも勝るとも劣らない感じですよね。
そういうビジネスセンスを持っている団体の研修などを、ビジネスマンは絶対に受講するべきではないでしょう。
お金をドブに捨てるだけでなく、変なマインドを植えつけられてしまうかもしれません。
商標 = 品質保証ではない
では最後に、一番重要な事をお伝えします。
ちょっと怪しげなビジネスマンは、商標をきちんと持っている事をアピールする事で、商品の品質も高いと錯覚させるような営業トークを行います。
ですが、きちんとした商標を持っていたとしても、その企業が扱っている商品の品質が高くなるというわけでもありません。
商標は5万円くらい払えば、誰でも取れる!
商標というのは、自分のやっている商売が、他の人がやっている商売と区別がつかないと困るので存在している権利です。
なので、その権利を保障する国が責任を持つのは、他に紛らわしい商標がないかどうかという部分だけなのです。
国は一切の品質管理をしていません。
そして、申請された商標に対する審査は、複雑な科学技術の特許ほどの手間はかからないのは簡単に想像できますよね。
なので、弁理士という特許や商標の専門家に申請を依頼して、さらに国に印紙税などの必要なお金を全部払ったとしても・・・?
安い弁理士さんに依頼すれば、たった5万円ほどで登録が可能なのです。
要するに、商標登録というのは、高校生だってアルバイトすれば登録料が払えるくらい気軽に取れる、品質の保障は一切つながらない権利なのです。
商標権の範囲
では具体的に、特定の言葉などを商標登録しておく事のメリットは何でしょうか。
知的財産の管理に厳しいと言われる、ディズニーは『ディズニー・イングリッシュ』という英語教材の商標で、具体例を考えてみましょう。
もし、ミッキーのディズニー社とは全く関係のないウォルト・ディズニーという同姓同名の人が、『ディズニー・イングリッシュ』という英語教材を販売したいと思ったらどうでしょうか・・・?
もちろん、消費者にとって紛らわしいので、『ディズニー・イングリッシュ』という名前の英語教材を販売する事は出来ません。
こういう時の、商標権の力は絶大です。
でも、この同姓同名のディズニーさんが、いかなる英語教材を販売してはいけないのかというと、そんな事は全くありません。
ミッキーマウスを使ったり、『ディズニー・イングリッシュ』と名乗らなければ、英語教材の販売を行う事は可能です。
なので、もちろんインプロ関連において商標を持っていない団体だって、インプロ研修を行っている可能性もありますし、それが優れている可能性もあります。
商標が重要というより、団体の体質が重要!
さて、インプロの研修を受けたいという消費者にとって、研修を行っている団体が商標を持っているかどうかは重要ではない事が分かったと思います。
それにより、やたら『商標』を持ち出して正当性を訴えようとしているインプロ団体の、うさん臭さも伝わったと思います。
なので、特にビジネス向けの研修を受けたいと考えている人は、まずインプロ団体が、必要以上に『商標』をゴリ押ししていないか確認しましょう。
そして、インプロ研修をやることが、ビジネスマンのどういうスキルが鍛えられるのかを、細かく質問しましょう。
商標の意味もきちんと理解していない団体は、ビジネスの知識も乏しい可能性が高いと思います。
そこをクリアした講師や団体にのみ、インプロ研修を依頼するようにしないと、後々、妙なトラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。
まとめ
インプロ団体の一部には、あまり信頼できない団体がある。
そして、実際に『インプロ』という言葉の商標を持っていると吹聴している団体も存在する。
だが、『インプロ』自体を商標登録する事は不可能。
また、ネット時代となった今、商標が本当に存在するかどうかは検索で一瞬でわかる。
商標は5万円ほどで申請が可能で、商品の品質保養とは関係がない。
なので、『商標を持っている』という事を過剰に大きく見せて、消費者に勧誘を行っている業者とは関わらないほうが良い。
そういったビジネスマインドを持ったインプロ団体から、ビジネス万向けのインプロ研修を受ける事は、百害あって一利なし。