こんにちは。文章と会話の専門家、放送作家の渡辺龍太(@wr_ryota)です。2018年5月に発売した本の内容も、アドラー心理学が若干参考にされたトークテクニックです。
会社や学校などの集団で生活をしていると、様々な人と接しなくてはいけません。そうやって、接しなければいけない人が増えてくると、全員と上手くやるというのは難しいですよね。どうしても、嫌いな人と接しなければならないっていう瞬間が、誰にでも必ずやってきます。
約10年前、私が初めてテレビ業界で始めた時、周りは嫌いな人ばかりでした。
というのも、当時のテレビ業界は、今よりも輪をかけて無法地帯。パワハラやタダ働き、時に暴力だって見かけるような世界で、どうやっても好きになれないような人ばかりでした。でも、もがき苦しんでいた時に偶然手に取った、アドラー心理学本を読んで、嫌いな人と接するのがスッと楽になりました。
今回は、その本や、最近ベストセラーにった「嫌われる勇気」などから、アドラー心理学と実体験を基にした、嫌いな人への接し方を紹介します。
まさに、目から鱗の考え方といった感じで、嫌いな人への接し方が激変する人もいると思います。
嫌いな人との接し方の革命!
まずは、アドラー心理学が何かというのをお伝えしてから、本格的に嫌いな人への接し方について書いていきますね。
アドラー心理学とは!?
アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラーというオーストリアの精神科医が始め、その後継者が発展させた心理学です。
その特徴は、次の二つに非常に力を入れている点です。
①他者を支配しないで生きる決心をすること
②他者に関心を持って相手を援助しようとすること
いかにも、嫌いな人への接し方に対し、答えを持っていそうな心理学という感じですよね。
全ての悩みは対人関係にある
そして、アドラー心理学では、『全ての悩みは対人関係にある』と考えます。簡単に説明すると、アドラー以前の心理学は、『全ての悩みは過去の経験に原因がある』と考えていました。
例えば、社会で成功していない理由を、『幼少期の虐待などのトラウマが原因である』と、過去に原因があると考えていました。一方、アドラー心理学で、現在、社会で成功していない理由を考えると・・・?
例えば、『本人の深層心理に、本気でチャレンジして傷つきたくないという目的』があると、自分の目的が原因だと考えます。そして、それを理論武装するために、過去のトラウマなどを持ち出しているという考え方です。
ちょっと、衝撃的ですよね。
嫌いと感じるのは自分の問題
アドラー心理学的の論理がわかった所で、嫌いな人というのが、自分にとって、どんな存在なのか具体的にみてみましょう。
他人の好き嫌いは、全部自分のさじ加減
まず、嫌いな人って何でしょうか。その人といると、嫌な気持ちになったり、一緒に過ごすのが辛い人ですね。そして、大概の場合、嫌いな人と一緒にいると、仕事などが上手くいっていないと感じると思います。
でも、アドラー心理学は、仕事をやりたくないという目的がある人が、それを正当化するために『嫌な人』をワザワザ発見してくるという考えです。
こんな事を聞いて、心にグサグサ来た人、『そんなワケないだろ!』とイライラした人など、大勢いると思いますので、深く説明しますね。
同じ人間を嫌いになるのは何故!?
例えば、男女付き合いなどで、長い間、お互いの事を知っているのに、急に相手を嫌いになって別れたくなったという話をたまに聞きますよね。では、その時に変わったのは誰かというのを考えると・・・?
相手の性格などは全く変わっておらず、変わったのはといえば、自分の心という事になってしまいます。
つまり、別れたいという目的が自分の心に最初に芽生え、そして、それを正当化するために相手を嫌いになるという感情が湧いてきたとアドラー心理学では考えるのです。
感情はコントロール出来る
いやいや、ちょっと待ってくれ!
嫌いになるとかいう感情は、自然に発生するもので、自分でコントロールできるなら苦労しないよ!と言いたい人もいるでしょう。
ですが、こんなケースはどうでしょう!?
例えば、自分の両親が、メチャメチャ激しい夫婦喧嘩をしていた時を思い出してください。(両親が一切ケンカをしない人の場合は、想像してみてください)
激しい怒鳴りあいになって、周りにある物を投げつけたりする勢いだったとしても、急に電話が鳴ったらどうなるでしょう?
今まで、ケンカしていたのが嘘の様に落ち着いた声で、母親が電話に出たりしませんか・・・?
そして、その電話が終わると、再び鬼の形相で怒り出すという感じですよね。客観的に見れば、明らかに、母親は自分の感情をコントロールしていますよね。むしろ、アドラー的に考えると、怒りという感情を利用して、相手に物を投げつけたりする事で自分の主張を通そうとしているとなるのです。
この様に、アドラー心理学では、嫌な人というのは自分が作り出した産物であり、嫌だという感情はコントロール可能と考えるのです。つまり、嫌いな人との接し方で悩まない様にするには、自分の深層心理にある目的を変えるだけで、一気に気楽になるのです。
嫌いな人と自分の問題を完全に分離する
とはいっても、相手が自分を理由無く嫌っていて、それが原因で、自分も相手を嫌ってしまっている事もありますよね。そういう事に対しても、もちろん、アドラー心理学は答えを持っています。
自分を嫌う人の心理は変えられない
自分が誰かを嫌ってしまうのは、自分自身が、何らかの目的のために、嫌いな人を作り出していると説明しました。それと同じ様に、自分が嫌われているのは、他者が自分を使って何らかの目的のために利用しているという事になります。
だから、アドラー心理学では、自分が誰かを嫌いになるのは自分の問題と考え、誰かが自分を嫌うのは他人の問題と考えます。そして、他人の問題には、自分は特に干渉する必要がないというスタンスです。
少なくとも嫌われている事は無視をする
というわけで、今まで説明してきた、アドラー心理学的な嫌いな人へのアプローチをシンプルにおさらいすると、次の3つになります。
①嫌いな人は、自分が作り出している
②自分の作った嫌いな人を利用して、何らかの目的を達成しようとしている
③相手から自分が嫌われる事は、相手の問題なので無視すれば良い
割とシンプルですが、ちょっと具体例がないと分かり難いかもしれませんね。
嫌いな人への接し方をアドラー的に考えてみた
さて、最初に書いた様に、私はテレビ業界で働く様になって、嫌いな人への接し方に悩んでいました。
というのも、当時のテレビ業界では、20代前半のスタッフなどは、単なるストレスのハケ口程度にしか思ってない人も多かったのです。
すぐにキレ出す先輩ディレクターの場合
私がアドラー心理学を少し知りだした頃、某有名制作会社で、仕事をする事になりました。
初めて会社に行った日、衝撃的な展開がありました。集合時間の10分前くらいに行ったのですが、事務の人しか会社にいませんでした。なので、そのまま会社で担当ディレクターが来るのを待っていたところ、集合時間から40分ほど多くれて登場しました。すると、開口一番、そのディレクターが私にブチ切れて、こう言われたのです。
「40分もあったのに、お前は何やってんだよ。部屋の片付けくらいは、最低限しとくのが当たり前だろ。」
私は誰かと間違われているのかと、目が丸くなってしまいました。
普通、初めて会社に来た人間は、勝手に会社に置いてある物を触るなんて事が逆にできませんよね・・・。
私は、この目の前にいる、その「嫌いな人」との接し方を深く考えました。
「嫌い」をアドラー的に整理
20代の頃の私は、割とキレやすいタイプでした。なので、通常の私なら、初日にケンカして仕事をしないで帰ってきたと思います。
でも、その時は何とか我慢して、アドラー的に考えてみる事にしました。私は初対面で、いきなりディレクターから嫌われていたわけです。なので、私は「何でそんなことを言われなきゃいけないんだ。殴ってやろうか?」的な怒りを覚えていました。
でも、この怒りは何か別の目的を、正当化しようとしているだけなのかもしれないわけです。やっぱり、そこは「居心地の悪そうな仕事だから、辞めてしまいたい」という目的がある様に思えました。そして、同時に私が嫌われているという事は、「私の問題ではない」と思う事にしたのです。
とるべき行動を考え勇気を出す!
その二つを意識すると、面白い事も感じました。本当に仕事を辞めるなら、ケンカなどせずに、落ち着いて正当に辞める手続きを取ればいいわけです。でも、それはそれで「初日に辞めるってカッコ悪いよな」と思っている自分がいたのです。
自分が選ぶべき選択肢を考える
そんな事を考えていたら、自分の取れる行動は2種類だという事がわかりました。
①勇気を出して、正当な手続きをして辞める
②辞めたいという目的を、別の目的に変える
この時は、私は②を選択しました。
というのも、私の事に興味を持って会社に呼んでくれたのは、そのディレクターの上司でもあるプロデューサーだったのです。少なくとも、そのプロデューサーとしばらく仕事をするという目的を持つ事にして、やめないという勇気をだそうと思いました。
そして、初対面の人に怒鳴りつけるような人は、頭がおかしいのだろうと割り切って、何を言われても「すみません。」と言って聞き流す事にしました。
アドラー的に考えて決断した結果は・・・?
仕事を初めて3日後、ようやくプロデューサーが会社に顔を出しました。すると、私を怒鳴りつけていたディレクターは、借りてきた猫の様に大人しくしていたのです。
2日目にうすうす感じていましたが、そのディレクターは1対1だと若手に当たり散らします。ですが、同期以上がいるとマトモだという事がわかり、対処法が分かりました。
ここの制作会社で覚えた事というのは、今でも役に立っている事が多いので、勢いで辞めなくてよかったと思っています。大げさかもしれませんが、一旦トラブルを自分で飲み込んで、アドラー的に考えるという時間を設けなければ、私はその場でケンカをして辞めていたと思います。
なので、アドラーを知っていたよかったと、その時からアドラーを定期的に意識するようになりました。
アドラーを完璧に実践できる人はわずか
こんな感じで、私は本当にピンチを感じた時は、アドラー的な思考に立ち返って、『嫌いな人との接し方』を考えてから行動しています。
結果は、基本的には良いのですが、完璧に出来た事は1度もありません。
最終的には嫌いな人も好きになる
私は今でも、アドラー関連の書籍が出ると読んだり、実践しています。でも、100%な感じで、体に馴染むとは思えません(笑)
でも、最終的には、アドラー心理学を極めると、嫌いな人がいなくなるそうです。むしろ、そんな人も自分にとって好きな人というか、『仲間』という感覚になるというのです。
私もアドラー心理学に出会ってから、7年くらいが経とうとしていますが、無理ですね。
最終目標は頭の片隅に置いとくだけでOK
それもそのはずです。なんと、アドラー心理学をを日常的にマスターするには、人生の半分の時間が必要と言われています。20歳で出会った人は、30歳までに習得できるかもしれません。
でも、現在70歳の人が出会ったら、105歳の時にマスターできるはずなのですが、確実に死んでしまっているでしょう。だから、私は嫌な人と接する時は、『アドラー的なアプローチを考えて、ちょっと気分を楽にする』というのが重要だと思っています。
あまりにも、アドラーをマスターしようと努力しても、それはそれで疲れてしまいますからね。
アドラー心理学をもっと知りたい人は・・・?
では、最後に、もっとアドラー心理学を知りたいと思った人のために、アドラー関連の書籍を紹介しておきます。昔から、何冊もアドラー関係の本は出版されていますが、やはり、2013年に出版されてベストセラーになった、この「嫌われる勇気」シリーズが入門には一番オススメです。
ちろん、アドラー心理学は今回紹介した、「嫌いな人との接し方」以外にも、様々な心の葛藤に答えを持っていますから、興味のある人は読んでみてください。