13年前に、アメリカでトランプの講演を聞いたことがあります。
その時に、私は「このオッサンは、大統領を2期8年、必ず務める!」と思いました。

今回は、そのことについて、話していきます。

たしか2007年だったと思いますが、私はアトランタで開催されたドナルド・トランプの講演を生で聞きました。講演の内容は、不動産を中心にした投資に関する心構え的な内容で、会場はとても大きく、少なくとも数千人はいたと思われる多くの人々がトランプの話を聞いていました。

私が、なぜ、その講演を聞きに行ったのかというと、単純にトランプのトークが好きだったからです。当時、アメリカに住んでいて、トランプのテレビ番組をよく見ていました。トランプの英語が母国語ではない私にも分かりやすい話し方、かつ激しい毒舌が面白く、「生講演が車で行ける所で行われる」と知り、すぐに申し込んだのを覚えています。

一方、会場にいたのは、現在進行系でお金に困っていて、「スモールビジネスを始めて人生を変えたい」と心底思っているような、教育水準も高くない感じの30〜60代ぐらいの人が多かったという印象を受けました。しかも、アトランタという土地柄もあるのか、黒人の方々が非常に多かったと記憶しています。

この講演で、特に印象に残っていることは、会場に「トランプを大統領に!」と書いたプラカードを持った大勢の人々が、会場の最前列や、トランプが入退場で通ると思われる動線に待ち構えていたことです。トランプが登場するやいなや、彼らは「トランプを大統領に!」と、トランプ本人に圧力をかけているようにも見える勢いで叫んでいました。

それを受けて、トランプが彼らに言った言葉もまたとても印象に残りました。

「私は、勝てる勝負しかしない。今、出馬しても勝てるとは思えない。本当に、私に大統領になってもらいたいのなら、もう少し、君たちが頑張る必要がある。勝機があるなら、私だって出馬を考えるかもしれない。」

この出来事が13年前の2007年です。多くの日本人は、ドナルド・トランプというタレントビジネスマンが、「死ぬ前にいかに目立つ仕事をするのか」を考え、思いついたように大統領選に出馬して、偶然受かったと思っているのかもしれません。

しかし、トランプの講演を2007年時点で聞いた私としては、そうは思えません。むしろ、トランプこそ、市民の声に押されて、「仕方ない!そんなにみんなが言うなら、俺、大統領になるよ!」と、出馬した人物という印象を受けています。

それを特に感じたのは、「トランプを大統領に!」というプラカードを持っている人たちから、講演中にトランプが様々な質問を受け付けていた時です。質問者は、英語圏では公の場で使うと、かなりNGなFワードを連発しながら、自分の暮らし向きが悪いとか、どんなビジネスをしたら良いかとか、順に質問していました。

それに対して、トランプは、時に「Fワードは、自分ぐらいビッグになった奴が、目立つために武器として使うのは良いけど、君が公の場で使うと損をするからやめておいたほうが良い」とかたしなめつつ、1つ1つ丁寧に答えていっていました。

例えば、質問者が「ネットワークビジネスに興味があるんだけど、どう思うか?」とか、なかなか際どい質問していました。しかし、トランプは、とても前向きに、決して、質問者を否定する事なく、こんな感じの返答をしていました。

「ネットワークビジネスの中には、非常に安い金額でセールスやビジネスの勉強をするのに良いプログラムを持っている会社がある。だから、そこでセールストークの勉強をするのは悪くない考えだ。セールスマンには学歴はいらないので、人生が開ける可能性がある。しかし、商材は自分の興味や情熱がある分野でないと、必ず途中で続けられなくなるし、中にはダメな会社もあるから、どんな商材を販売するのかと、どの会社で何を学ぶかよく吟味するように。」

この返答は、聞く人が聞けば、トランプは怪しいビジネスを推奨して、自分の講演を社会的弱者に売りつけて食い物にしていると思うかもしれません。しかし、このトランプのアドバイスは、それなりに年齢のいった社会的弱者の手段を選ぶ余裕がない質問者にとっては、現実的と感じるのではないでしょうか。

少なくとも、60歳が見えてきているような人に、民主党的な「生涯学習の時代です。今からでも遅くないので大学に通うなどのスキルアップが重要です。そのためのサポートプログラムを探しましょう!」というような美しいメッセージよりは、グレーではありますが、極めて現実的で響くものがある返答のように思えます。

その上、幾度となく、トランプは「アメリカという国は、君たちのようなチャレンジ精神をもったビジネスマンを必要としている。売るものや学歴がない人でも、“情熱”は持っている。その情熱を人に売るんだ!どんなに形がおかしくても、情熱さえあれば、物事は形になるんだ。」というようなことを語っていました。このスピーチに、観客は熱狂し、「トランプを大統領に!」という声が、13年前の2007年当時で幾度となく上がっていたと記憶しています。

私は民主党系の候補者が語る、理想論のような美しい話を聞くたび、このトランプの講演のことを思い出します。そして、トランプぐらいしか、こういった学がなくて貧しい人たちの話を真剣に聞き、英語のネイティブでなくても分かりやすい簡単な言葉で、彼らを支援が必要な弱者ではなく、アメリカを支える重要な国民の1人だと語る人はいないんじゃないかと感じるわけです。

さて、トランプは4年間大統領を務めました。確かに、振る舞いは美しくない。しかし、現実的には規制緩和をしたり減税をするなど、私の聞いた講演に参加していた人も、「自分たちのために仕事をしてくれた」と感じる部分があったと思われます。

また、数々の悪態というか、最近なら郵便投票に難癖をつけて、選挙で負けても政権に居座るかもしれないというような姿勢も、ネットワークビジネスに手を出すぐらいしか選択肢が無い人にとっては「まわりから、どう思われても、やれることは何でもやるんだ!(それも自分たちの声を政治に反映するために)」という共感できるポイントなんだと思います。

こうやって、「無理矢理でも、人にどう思われようとも、情熱と圧倒的な努力で形にするんだ!」というのが、トランプの真髄で、支持者を熱狂させているのだと思います。というか、むしろトランプのやることなすことは、全部、そこに集約されている気がします。ギリギリですが、なんだかんだでハゲ頭をさらしているわけではない、トランプ大統領のトレードマークの髪型も、その1つのような気もします。

さて、今、日本のメディアでは、トランプ批判一色という印象を受け、トランプを支持している人の気持ちを説明している情報は少ないように思います。ですから、個人的な経験を元にした考察でしかありませんが、少なくとも、私が確認した範囲では13年前から「トランプを大統領に!」という熱は発生していたので、今回は、それをみなさんに紹介したいと思って書きました。

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