私のようにフリーランスで働いている人や、ものすごく小規模の会社って、食べていくために、目先の仕事に追われてしまいますよね。
そして、周りから見ると、何の専門家なのか分からないほど手を広げた状態になってしまい、結果的に、さらなる上にステップアップ出来なくなってしまいます。
20代の頃の私は、まさにそんな状態で、放送作家という看板を掲げていながら、ニュース論評や映画評論とか、仕事が来れば手を広げたい放題広げてました。
そして、気づけば、輸入販売のウェブページを運営していたり、友人とバーの経営なんかもしていて、まさしく、周りから見たら正体不明な状態でした。
確かに、一時的には金銭的には恵まれました。
しかし、周りから見ると「何でも出来るは、何もできないと一緒」に見えるため、本当に私がやりたいクリエイター的な仕事が減ってきてしまったのです。
かといって、テレビだけとか、自分の枠を狭めたくもなく、色々と葛藤した結果、最初は、自己啓発っぽくて馬鹿にしていたのですが・・・!?
ミッションステートメント
というのを書いてみることにしたのです。
実際、それにより視界がクリアになった気がしたので、今回は、ミッションステートメントの書き方を、具体例をあげて説明したいと思います。
ミッションステートメントとは、自分(会社)の憲法
ミッションステートメントと言われても、それが何なのか、よく知らないという人も多いかもしれないので、簡単に説明します。
ミッションステートメントとは、私たち個人(あるいは会社)の、憲法のようなものと理解してみてください。
例えば、日本国憲法には、日本という国が、どうあるべきかを表す信念やモットーなどが書かれていますよね。
だから、政治家は憲法の条文に反するような法律を作れませんし、もし、憲法に反する事を誰かがやれば、裁判などになって、それは改められます。
そのため、憲法が変わると、国の性格がガラリと変わります。
例えば、戦前の日本は大日本帝國憲法という、今の日本国憲法とは別の憲法を持っていました。
だから、戦争になれば、赤紙で若者を強制的に召集して、時に、特攻隊になる事を命じる事が出来ました。
しかし、現在の日本国憲法では、警察官が自分の身に危険が迫ったとしても、銃を使う事がきつく制約されています。
国民の命に対する国の態度が、戦前と戦後では全く違うのは、憲法が変わったからなのです。
そして、会社や個人の憲法のようなものを、ミッションステートメントと呼んでいます。
それを持てば、戦前と戦後で日本という国の行動傾向が変わったように、会社や個人も、人生(会社)の進むべき方向が定まるのです。
個人のミッションステートメントの書き方
次に、ミッションステートメントの書き方について説明します。
個人のミッションステートメントの書き方がわかると、企業というか、組織の場合も書けるようになるので、まずは個人の場合から説明します。
ミッションステートメントの書き方にも、いろいろあると思いますが、今回は、『7つの習慣』という有名な本に出ている方法を、私なりに日本人向けにアレンジしてお伝えします。
ミッションステートメントには、どのような人間(会社)になりたいのか(人格・社風)、何をしたいのか(貢献、功績)、そして、それらの土台となる価値観と原則を書く必要があります。
いきなり、信条あるいは理念の表明をスラスラとを書けと言われても、ちょっとキツイですよね。
そこで、この本の著者であるスティーブン・R・コヴィー博士は、ミッションステートメントを書くにあたって、終わりを思い描く習慣を持つ事が効果的だと言っています。
個人であれば、「自分の死」を想像してみる事が肝心なのです。
そんな、数十年も先の事を考えろと言われても、ちょっと、頭がフリーズしてしまうという人もいるでしょう。
そういう人は、あと1年しか生きられないとしたら、あなたは悔いのないようにいったい何をしたいのかを想像します。
次に自分の葬式を想像して、その式に出席している家族・友人・仕事仲間などが、自分をどんな人だったと話し合っているかを想像します。
それを頭の中でしばらく考え込んで行くと、「人生で必ずしたいこと」と言える事がいくつか浮かんでくるはずです。
それが頭に漠然と浮かんできたタイミングで、次の3つについて、出来るだけノートに書き出してみましょう。
1、これまでの人生で最も評価された出来事
2、これまでの人生で満足感を得られた仕事や出来事
3、あなたが周りから依頼されたり頼られること
ここまで終えたら、信頼できる親友または家族などを3名ほど選び、改めて、あなた自身の才能はなんだと思うか聞いてみましょう。
これにより、自分で分析した自分とは、少し違った部分に周りの人は才能があると思っていたりする事に気づく事ができます。
※もちろん、自己分析と完全一致する事もあるでしょう!
そして、これらをすべて合わせて考えて、ミッションステートメントを実際に紙に書いていきます。
せっかく、ここまでやったのに、実際に紙に書き出すという作業をしない人もいるかもしれません。
ですが、紙(パソコン)に書かれた文章を推敲すると、より深く文章の意味を考える事ができるので、とにかく書く事がとても大切です。
ちなみに、このブログでは簡単に書きましたが、もっと深く知りたい人は、先ほど紹介した、「7つの習慣」を読む事をオススメします。
でも、「7つの習慣」が5センチぐらいある分厚い本で、とても読む気がしないという人は、漫画版を読んでみても良いかもしれません。
個人のミッションステートメント 具体例
では、具体的に、どうやってミッションステートメントを文章にするのかというと、憲法と同じように書くという事を意識してください。
なので、憲法の前文の様な、普通の文章で書かれている部分と、条文からなる部分を用意しましょう。
ここでミッションステートメントの下書きサンプルを、紹介したいと思います。
私のミッションステートメントを公開しようかと思ったのですが、放送作家の仕事が多く絡んだものになっていて、やや企業の場合と少し似てしまいます。
なので、30代の既婚女性がミッションステートメントを持つとどうなるか、というシミュレーションをしてみたいと思います。
30代子持ち女性・ミッションステートメント(下書き)
《前文》
私には旦那と娘・息子がいて、同じ敷地内には私の父母が暮らしています。
経済的にあまり豊かではない私たちは、色々と父母にお世話になってしまうこともあります。
しかし、子供たちが大きくなる前には、私は親の面倒も見れるほどには成長したいと考えています。
なので、私は【経済的に豊かになり】、【子供や親などが貧しい思いをしない生活をしたい】と考えています。
そのためには良い仕事、または成功する仕事に就くことが重要と考えます。
それに加えて、家庭も楽しく、落ち着く安らぐ場所を作ります。
そのためには、【私自身が楽しみながらやりがいのある仕事】を見つけ【経済的にも、心も余裕のある暮らし】をしたいと考えます。
その理由は、【誰にとっても、心の余裕のある人のそばは居心地がいいから】です。
《私の価値観》
1・人に対して安心感を与えられる存在になりたい
2・人の役に立つ存在でありたい
《私に必要なこと》
1・自分自身が心の余裕などがある必要がある
2・短気ではなく、人の話を聞いたりすることが大切
3・私自身が満たされているということが前提として必要である
《私がやるべきこと》
1.自分自身にストレスをためすぎず、自分の本当にしたいことや感情を抑えないで認める
ミッションステートメントは、修正しながら良くしていく
この段階では、何かちょっと、頼りないミッションステートメントな感じがしませんか?
そりゃそうです。
なぜなら、ミッションステートメントは、自分自身の内面を掘り下げて、自分で自分を深く理解しないと書けないからです。
1ヶ月や2ヶ月間、ちょっと考え込んだぐらいでは、良いものはできません。
だから、一度、ざっくりしたミッションステートメントを作り、それに従い行動をしながら・・・!?
定期的に、ミッションステートメントを自分に合う様に、改造していく必要があるのです。
ところで、日本では、戦後、憲法改正は全く行われていません。
ですが、世界の多くの国では、憲法は頻繁にではありませんが、修正が加えられています。
ミッションステートメントは憲法のようなものですから、半年に1度など、自分の生活の実感を考えた上で、ミッションステートメントを見直して、修正を加えていきましょう。
企業のミッションステートメントは、なるべくメンバー全員で考える
次に、企業のあるべきミッションステートメントのあり方について説明します。
今までの個人のミッションステートメントの書き方の説明で気づいたかもしれませんが、ミッションステートメントは自分の頭を使って書くというプロセスが非常に大切です。
だから、企業のミッションステートメントも考える場合でも、それを守るメンバーが全員参加する形でミッションステートメントを考えたほうが良いのです。
企業の場合は、終わりを考えると言っても、倒産の瞬間を考えるという必要はありません(笑)
企業の場合は、その企業のサービスによって、世の中がどう変わったかというのを想像してみましょう。
例えば、スターバックスのミッションステートメントは、こんな感じです。
スターバックスの使命は、会社として成長しながらも主義・信条において妥協せず、世界最高級のコーヒーを供給することである。
・お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる。・事業運営の上で不可欠な要素として多様性を受け入れる。
・コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売において、
常に最高級のレベルを目指す。・顧客が心から満足するサービスを常に提供する。
・地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
・将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する。
スターバックスの創業者が、気軽に最高級のコーヒーが気軽に買える世界を想像したら、こういうミッションステートメントが書けるような気がしませんか?
繰り返しになりますが、企業のミッションステートメントを書くには、その企業によって、どんな世界が実現できるのかというのを、深く考える必要があるのです。
ちなみに、もし会社がとても大きい場合、全員が参加してミッションステートメントを作ることは難しいですよね。
なので、まずは経営陣が会社全体のミッションステートメントを作ります。
そして、そのミッションステートメントに反しないミッションステートメントを、部や課という小さい車内グループで独自に作るという方法が良いとされています。
先ほど、憲法が変わったために、日本国の雰囲気が変わったと書きました。
それと同じ様に、会社のミッションステートメントが変わると、本当に社風が変わるのです。
企業のミッションステートメント
(経営理念・社訓)の具体例
さて、ここで社風とミッションステートメントが、どのぐらい一致するのか、具体例を見てみましょう。
※日本の企業は、ミッションステートメントではなく、会社の憲法的な文言を、経営理念や社訓と言っている場合もあります。
電通鬼十則 過労死につながったミッションステートメント
最近、社員に自殺者が出て、話題になっている電通のミッションステートメントを見てみましょう。
電通鬼十則
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。という部分など、いかにもブラック企業的で、過労死する社員が現れそうな文章ですよね。
実際、電通社員だった高橋まつりさんが過労自殺した事がきっかけで、電通鬼十則は手帳から削除されるようになったそうです。
電通「鬼十則」を社員手帳から削除へ 過労自殺遺族が問題視
ラーメン二郎社訓 個性を追求したミッションステートメント
次に、電通とは、全く違った雰囲気の会社である、ラーメン二郎のミッションステートメントを紹介します。
ラーメン二郎とは、とにかく高カロリーなラーメンを提供するラーメン店です。
そして、その社風は独特で、毎回、店に行くたびに味にバラツキがあったり、各店で味が異なっているなど、自由な感じで各店が経営されています。
そんな店をまとめるのが、次のような、一風変わったミッションステートメント(社訓)なのです。
一、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、週末は釣り、ゴルフ、写経
二、世のため人のため社会のため
三、Love&Peace&Togetherness
四、ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気
五、味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ、家庭の乱れは社会の乱れ、社会の乱れは国の乱れ、国の乱れは宇宙の乱れ
六、ニンニク入れますか?
とても、独特ですよね(笑)
でも、ラーメン二郎に言った事がある方はわかると思いますが、二郎は、このミッションステートメントが似合う店で、ファンはそこが好きだったりするのです。
というわけで、今回はミッションステートメントとはなんだという事と、個人・企業のミッションステートメント書き方を説明しました。
この記事をきっかけに、自分・会社の憲法を作って、また一つレベルの高い所まで行けるようになる人が出たら幸いです!
まとめ
フリーランスなどで仕事をしていたりすると、目先のお金が入ってくる仕事に追われ、自分が何者かを忘れてしまう。
そういう時に役立つのは、しっかりとしたミッションステートメントを作っておく事だ。
ミッションステートメントとは、個人の憲法のようなもので、自分の生きがいや人生の目的などを定め、その文章に反する事をしないように心がけるというもの。
それを作り、時々、改訂しながら自分らしい生き方を模索すると、また一段レベルの高い人生が送れるはずである。
参考図書:「七つの習慣」