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この本の触りを読みたい方は、ぜひ、私のダイヤモンド・オンラインでの連載をお読み下さい。こんにちは。文章と会話の専門家、放送作家の渡辺龍太(@wr_ryota)です。
インプロとネットで調べると、インプロが演劇なのか、ビジネスの分野なの言葉なのかも、よく分からない感じですよね。
そして、 即興・アドリブ・インプロビゼイション・エチュード という、様々な言葉に巡り会うでしょう。
もし、スーパーの「インストアープロモーション」のインプロを知りたいという方が、このページに来ていたら、全く別の話題になりますので、こちらに移動してください。
そして、結局、インプロって何だ?というのが解消されなかったという人も多いのではないでしょうか。
私が最初にインプロに出会ったのは、ニューヨークで暮らしているときに通ってい映画学校の演劇の授業でした。
なので、インプロという意味を、混乱なく、すぐに理解しました。
ですが、もし、私が日本でインプロに出会っていたら、おそらく皆さんのように、インプロの意味がイマイチつかめなかったと思います。
なので、今回はインプロが何かというのを、演劇関係者から、ビジネスマンなど、すべての人に向けて分かりやすく解説します。
インプロという言葉の意味を正しく理解しよう!
まずは、インプロは何かというのを、英語的に深く掘り下げます。
日本でも、インプロの事をインプロビゼーションと言う人もいますね。
お気付きの様に、インプロはそれの省略形です。
インプロの定義は、『即興』の一言に尽きる
次に、インプロビゼーションを、欧米人が使う辞書で調べてみます。
すると、インプロバイズという動詞の名詞系と出てくるので、improviseの意味を調べて見てみましょう。
意味は・・・
1、準備なし話しをしたり、パフォーマンスをする事
2、使えるものは何でも使って、何かを作り出す事
という、二つが紹介されています。
これに当てはまる日本語は何かと言えば、『即興で何かをする』という意味になりますね。
インプロは”即興”という英単語である
そして、私がニューヨークでとった映画学校の芝居の授業では、『発声』、『台本の理解』、『キャラクター作り』、そして『インプロ』という授業がありました。
英語で例えると、英語学校の授業が、『文法』、『リーディング』、『リスニング』と分かれているような感じです。
リーディングやリスニングという言葉は、英語学習のための専門用語というわけではありませんよね。
日常で使われる、”読む”や”聞く”といった意味の単語です。
それと同じように、インプロという言葉も芝居用語ではなく、シンプルに”即興”という意味の単語なのです。
なので、演劇だけでなく、即興演奏、即興スピーチなど、様々な事に対してインプロという単語は使われます。
アドリブやエチュードと、インプロの意味の違い
次に、時に日本人が激論を交わす、アドリブやエチュードとの違いを説明します。
アドリブというのは、ラテン語を語源とする”即興”というような意味です。
一方、エチュードというのは、フランス語で絵画の下書きなどを表す言葉です。
なので、アドリブという言葉は、音楽でも演劇でも、本番だろうと練習だろうと、即興であれば使われます。
一方、エチュードという言葉は、語源を考えても分かるように、練習でしか使われない言葉です。
そして、特に日本の演劇業界は、エチュードという言葉を、”台本には無いシーンを、俳優のキャラクター解釈によって即興で演じる”という練習に対して使っています。
ですが、英語圏では、アドリブやエチュードという単語は、ほとんど使われることはありません。
英語では、即興で何かをする事に対しては、全て”インプロ”という言葉が使われるのです!
つまり、即興・インプロ・アドリブの言葉のニュアンスの違いを議論するという事は、”お菓子”・”デザート”・”スイーツ”の意味の違いを議論するような事だったのです。
演劇やビジネストレーニングとしての、インプロの歴史
私もニューヨークで即興の授業に出会ったように、欧米ではかなり昔から俳優を志す人が学びやすいように、即興力を身につけるためのノウハウが完成されています。
アメリカ演劇業界のインプロ
役者が演技を学ぶというのは、かなり大変な作業です。
それをシンプルに学ぶ方法はないかと考えた、アメリカ人のヴィオラ・スポーリンという女性がいます。
彼女が、『シアターゲーム』という、即興で演技をしたりするゲームをする事で、演劇を学ぶ方法を考え出しました。
そして、"Improvization for the Theater(演劇のための即興)"という本を残し、世界中の演劇人が今も参考にしています。
ビジネスマンのインプロについて
スポーリンなどの影響もあり、アメリカでインプロのゲームや、完全に即興の芝居自体をショーとする劇団が出現しましました。
そして、その中でも有名な劇団に、古くから活動しているセカンド・シティというのがあります。
セカンド・シティは、ショーも人気がありましたが、それだけでなく、即興力を生徒に付けさせるプログラムに定評がありました。
実際に、日本でも有名なロビン・ウイリアムズなど、数々の映画やテレビ関係者を数多く排出しています。
さて、インプロの英語の辞書の意味に、『何の準備も無しに話す事』という意味がありましたね。
まさに、それは俳優だけでなく、ビジネスマンにも求められるスキルです。
なので、セカンド・シティーは俳優に即興を教えてきた経験、そして、劇団をビジネス的に成功させた経験を融合し、ビジネスマン向けた即興講座を開始しました。
これは人気になり、ツイッターの創業者なども学んで絶賛しているます。
その詳細が書かれた本が、日本でも販売されていますので紹介します。
タイトルが、かなり意訳されていますので、補足しておきます。
元のタイトルや副題は、英語の感覚だと、ビジネスマンが『即興を学ぶ』というニュアンスに感じます。
ですが、日本の出版社などは割と、ビジネスマンが『インプロという即興コメディーを学んでいる』という様な言い方をしています。
この様な『インプロ=即興コメディー』というような意訳も、日本人にとってインプロの定義を分かりにくくしている原因かもしれません。
日本でインプロの見れる場所
ここまで読んでいただいて、インプロが演劇の特別な何かではない事は分かっていただいたと思います。
むしろ、インプロは日常生活に溢れているのです。
もちろん、日本のエンターテインメントの中にも、多くのインプロを発見する事ができるのです。
インプロは日本のテレビが大好きな手法
ご存知コント55号というお笑いコンビは、70年代のテレビを席巻しました。
実は、このコンビのコントには台本が、全くありませんでした。
例えば、萩本欽一さんが警官、坂上二郎さんが泥棒を演じるという事だけを決めて、コントを行っていました。
他にも、笑福亭鶴瓶さんが、TBSで鶴瓶のスジナシという番組をやっています。
この番組では、鶴瓶さんが何の台本もない状態で、ゲストのお笑い芸人や俳優と、即興で芝居をして視聴者に見せるという番組です。
これらは明らかに、インプロ中のインプロと言えますね。
ひな壇トークの番組は、すべてインプロだ!
欧米では、インプロを学ぶというのは、”コミュニケーションを学ぶ”に近い感覚があります。
なので、アメリカでは、多くのコメディアンだけでなく、テレビ司会者なども演劇教室に通い、特に即興を学んでいます。
でも、もちろん”インプロを学ぶプログラム”を受けていなくても、インプロが上手な人たちは大勢います。
実際、コント55号や鶴瓶さんだけでなく、日本のタレントさんのほとんどは、インプロ自体は学んだ事がないでしょうが、インプロの達人です。
例えば、日本のアドリブを重視したひな壇トーク的なバラエティーも、すべてインプロショーなのです。
面白い例として、私は2014年から、キャイ〜ンの天野さんに司会術などの秘密を聞き出したメルマガや本を製作した経験があります。
天野さんは、欧米のインプロに対する知識はほぼゼロです。
ですが、結果的に本人がトークで気をつけている事などを伺うと、実際、かなりの確率でインプロの概念に近いものがありました。
これはスティーブ・ジョブズが大学で経営学を学んでいなくても、自分の経験などから偉大な経営者になったのと同じですね。
インプロは欧米のプログラムで学んだ方が楽に習得できますが、絶対に教室などで学ばないと習得できないものでもないのです。
イギリス(キース・ジョンストン)の影響を受けたインプロ劇団
さて、話題はガラッと変わり、イギリスに、アメリカのシアター・ゲームに影響を受けた、キース・ジョンストンという人がいます。
この人は、スポーリンが考案した演技を学ぶために行うゲームを自体を、ショーとして観客に見せる事に力を入れました。
そして、キース・ジョンストンは、そうやって即興ゲームを観客に見せたり、あるいは即興で芝居を観客に見せるショーを、『シアター・スポーツ』として体系化しました。
それに影響を受けた日本人が、日本国内で中小の団体を作って活動しています。
こういった団体は日本で、『インプロ』という単語を本来の”即興”という定義ではなく、『インプロ = シアター・スポーツ』であると独自に定義して活動しているようです。
そして、インプロの研修を依頼する時は、『商標』に必ず注意!で詳細を書きましたが、いろいろな団体がインプロ関連の商標を取るなどして、インプロの定義を複雑化させるようです。
インプロを習う効果
だいぶ長くなってしまいましたが、『インプロとは何か?』という部分を説明し切りました(笑)
次に、インプロを習うと、どんな効果があるのかを説明します。
インプロを繰り返し、自分のアイデアを否定される事に慣れる
即興で何かをするという事は、何か自分でアイデアを出す必要があります。
例えば、即興でスピーチをする場合、それをする人は絶対に、何を話すかという事を考えなければなりません。
でも、頭をフル回転させて何を話すかを考えても、そのアイデアが周りに受けないという事もよくあります。
それは当たり前なのですが、普通の人は成功よりも失敗ばかりに目が向いてしまうのです。
即興のトレーニングでは、そうやって一生懸命考えた自分のアイデアが、必ずしも周りから良い評価を受けるわけではないという経験を積み重ねます。
それにより、『失敗や、周りから評価されない事は当たり前』なので、それを恐れてはいけないという事を学ぶのです。
コメディアン・司会者であれば、ギャグを言ってもウケない事がある事を受け入れます。
俳優であれば、自分の演技に対する失敗を、肯定的に受け入れられるようになります。
ビジネスマンであれば、自分のプレゼンや商談が、100%の確率で他人に響くわけがないという事を学ぶのです。
インプロゲームなどで、他人のアイデアに乗るという事を学ぶ
即興で他人とコミュニケーションを行うという事は、当たり前ですが、自分だけで何かをしているわけではありません。
しかし、相手が自分に投げかけてきたアイデアを、『いや、そうじゃなくて』とか、全否定してしまう人が大勢います。
例えば、コメディアンであれば、相手のフリに乗っかって、面白いオチ(アイデア)を自分で加えなければ、一人で漫談をやっているのと変わりません。
ビジネスマンであれば、会議に時に他人が新しいアイデアを出した時、『いや、そうじゃなくて』と全否定するなら、そもそも会議を開く意味がありません。
でも、多くの人は自分が他人のアイデアを否定しているという事に、あんまり気づいていないのです。
そこで、即興で何か芝居的なゲームをすると、いかに自分が他人のアイデアに乗るという事を拒否しているのかというのに気づく事ができます。
同時に、他人のアイデアに乗って何かをする方が、より新しい何かを生み出して、クリエイティブな事が出来るという事にもきづけます。
だから、俳優・コメディアン・司会者・ビジネスマンという、一見、全然違う職業の人から、即興のトレーニングは好まれるのです。
インプロを学びたかったら、どうしたらいい!?
では、最後に日本でインプロを学ぶ方法をお伝えします。
インプロに興味のある演劇人の場合
この場合は、割と簡単にインプロを学ぶ事ができます。
日本には先ほど説明した、イギリスのキース・ジョンストンという人の流れを組むインプロ団体が、たくさんあります。
なので、『キース・ジョンストン インプロ』や、『インプロ ワークショップ』と検索してみてください。
そこで引っかかってくるのは、大体がキース・ジョンストン系の団体だと思います。
そういう所で学ぶと、また日本のお笑い学校や、演劇教室とは違ったアプローチで芝居が上手くなっていくと思います。
インプロを学びたいビジネスマンの場合
日本で、信頼性の高いビジネス向けのインプロ講座を行っている個人・団体は、まだ皆無といって良いと思います。
なので、ビジネスマンでインプロを学びたい人も、演劇のインプロ教室に通って、そこで自分で何かを学び取っているというのが主流になってきます。
また、そういう事が割と起きているので、演劇にしかバックグラウンドが無い人などが、ビジネスマン向けのインプロインストラクターとして活動したりしています。
そういうわけなので、ビジネスマンの人でインプロを学びたい場合も、演劇を学びたい人と同じように、インプロ劇団に連絡を取ってみましょう。
ちなみに、あまりにも日本にはビイネス系のインプロが少ないので、今、私が少しずつ始めています。
インプロを書籍で学ぶ
インプロの教室に通うのは大げさだと思う人も、かなり大勢いるでしょう。
そういう人にオススメなのは、やっぱり書籍です。
次の本が、オススメです。
まとめ
英語におけるインプロという言葉は、『即興』という言葉でしか無い。
日本では出版社やインプロを行う団体が、マーケティング目的で『意訳』を繰り返して分かりにくくなってしまっている。
日本でインプロを見たい場合は、テレビなどを中心に、いろいろな所で見る事ができる。
もし、インプロを学びたい場合は、日本全国の中小のインプロ団体に連絡を取れば良い。
だが、日本にはビジネスマン向けのインプロは、まだまだ不十分である。
ビジネスマンがインプロを学びたい場合は、書籍が中心となってくる。
※インプロについて、もっと知りたい方は、こちらの記事をどうぞ!