こんにちは。文章と会話の専門家、放送作家の渡辺龍太(@wr_ryota)です。この本の抜粋のような形で、タモリ式の会話術をブログでも、少し紹介したいと思います。
会話の悩みとして、会話のネタが見つからないというのがありますよね。
特に、年齢、趣味などが、まったく違う人との会話のネタに、悩んでいる人も多いとおもいます。実は、会話のプロである若手お笑い芸人が商店街ロケに行っても、70歳のお婆さんとの会話がまったく膨らまない、というような事は起きがちです。
なので、実は私たち放送作家が、芸人とお婆さんの会話が膨らむような仕掛けを、裏で考えていたりします。そして、私は放送作家として、タモリさんのトーク方式を、ものすごく参考にしているんです。
ブラタモリ(2008年〜 NHK)
タモリさんは、ブラタモリなどで一般の人を相手にトークをしても、会話のネタに困っているような時はありませんよね。
もちろん、他の番組で芸能人や歌手を相手にトークをしている時も、会話のネタに困っている様子は一切ありません。
そんなわけで、今回は一般の人でも参考になる、会話のネタに困らないタモリ式トークのやりかたについて、深く掘り下げてみたいと思います。
会話のネタが見つからない原因
まず初めに、多くの人がタモリさんとは違って、会話のネタに詰まってしまうのかを考えましょう。
普通の人は、会話に目的意識がない
実は、本人が意識しているかどうかは別にして、タモリさんのトークには必ず目的意識があります。話している相手がよく知っている『○○って何?』とか、『痩せたのはどうして?』とか、何らかの事をタモリさんが知りたがっています。
でも、会話のネタに困ってしまう人って、『とりあえず、共通の話題をしておけば良いんだけど・・・。』的な感じの構えでいる事が多いと思います。なので、会話をしている目的というのが、ぜんぜん明確じゃ無いんです。
この会話の目的が見つからない人に向けては、以前にブログを書いたので、そちらの記事も参考にしてみてください。
普通の人は、相手を観察していない
会話に目的意識を持てなくて、それで会話が続かない人って、相手の事に興味があんまりなかったりするんです。会話に目的意識のある、タモリさんのトークを思い出してください。
例えば、モノマネでもおなじみのフレーズの、
というのは、相手の事を観察しているからこそ聞ける事ですよね。
実は、会話って、目の前にいる相手を観察して出てくるネタで話したほうが、簡単に会話が盛り上がります。でも、話のネタに困る人は、どっか別の所から切り口を見つけて、会話をしようとしがちなんです。なので、とにかく、相手を細かく観察してみましょう。
普通の人は、色んな事に対する浅い知識がない
タモリさんは、どんな話題となっても対応できる知識があるイメージですよね。特に、ブラタモリでは、専門家も驚くくらいに、タモリさんが歴史などに詳しかったりする事もあります。
でも、さすがにタモリさんも、10代のアイドルの女の子のハマっている趣味にまで精通しているわけではありませんよね。
それなのに、どうして、そういう若い人との会話のネタに困らないかというと、メディアで流行っている事は知っている程度の『浅い知識』はあるからです。
そういう浅い知識があると、例えば、身につけてるアクセサリーに対して・・・?
と、質問できるくらいは、知識を持ってます。
普通の人だと、自分の年齢・職業・興味に関係ない情報を、完全にシャットアウトして生活している人も多いですよね。だから、『よく知らない事を質問する』という、最強の会話のネタを作り出す事が出来ないのです。
なので、ちょっと自分の趣味や世代と違うテレビや雑誌に、時々目を通すだけで、会話のネタに詰まらなくなっていくはずです。
会話中に相手を観察すべき事
会話に目的意識を持つ事や、会話の知識を広げる事は、何をすれば良いのか、説明しなくてもイメージしやすいと思います。
ですが、会話の相手を観察してネタを見つけてくる方法は、ちょっとコツがいるので、詳しく書いていきます。
相手の変化に敏感になる
まずは、会話のネタのヒントをえるために、相手の変化に敏感になってみましょう。
そういう視点を意識して相手の外見や、バックグラウンドの変化を観察するだけで・・・?
とか
と、聞きたい事が、割とスムーズに思いつくはずです。
だいたいの場合、他人から見て何らかの変化を感じるという事について聞くと、本人には何らかのエピソードがあるものです。あるいは、ほとんどの人は自分自身に興味があるので、本人が気づいていない自分の変化を他人から指摘されると、とたんに饒舌になったりします。
そして、もし初対面の人と話す場合は、『一般的な30代男性』と比べて、『目の前にいる30代男性』はどうか、という視点で違いを意識してみましょう。そうすれば、本人の変化に対する話題のように、会話のネタに困らず話が膨らむ可能性が高いと思います。
正直に接する事
次に、相手の変化についての質問をする時に肝心なのは、自分の気持ちに正直になるという事です。このブログでは何回も指摘していますが、人間はとても敏感な生き物なんです。つまり、人は話し相手の嘘というのを、かなりの確率で見抜くのです。
だから、興味のない事を興味があるというような、嘘は絶対にやってはいけません。タモリさんが、何か無理して、自分が興味なさそうな事を聞いているイメージってありますか?全然ないですよね。
だから、タモリさんのトークは、話し相手も楽しく会話してしまうのです。相手の事を細かく観察すれば、何となく興味のある部分っていうのは、必ず見つけられるはずです。
なので、相手に興味を持てないと思ったら、自分の責任だと思って、相手の事、特に『変化』を細かく観察してみましょう。もちろん、心底バカにしたくなるような変化に気づく事もあるでしょうが、そういう時は、触れないでおきましょう。
相手と同じくらいのエネルギーに保つ
そして、割と見逃しがちなのですが、会話相手と同じくらいのエネルギーを保つと、会話のネタが見つかりやすくなるという事です。会話のネタというのは、毎回必ず自分が相手に投げかける必要のあるものではありません。
相手が自分に、会話のネタを投げかけてくる事だって、十分にありえるわけです。その時に、相手が自分の事を『話しにくい相手』と思っていたら、相手が話のネタを提供してくれる可能性は下がります。
例えば、笑っていいとも!のテレホンショッキングに、能年玲奈ちゃんがゲストだった事がありました。すると、タモリさんは能年玲奈ちゃんと、同じようなゆったりとしたテンポとエネルギーで、『カワイイね〜』と言いながら会話を進めていました。
一方、同じくテレホンショッキングに猿のモノマネをしながら登場した間寛平さんに対し、タモリさんは・・・? 同じくらいのエネルギーを使いながら、タモリさん自身も猿のモノマネで応戦していました。
そして、テレホンショッキングの枠が、全て猿のモノマネだけで終ってしまったという事もありました。やっぱり、同じくらいのエネルギーの人に対して、話しやすいと感じて会話が盛り上がる人は多いはずです。
特に注意したいのが、怖いオーラを出している人に対してです。そういうオーラを出している人に、オドオドしながらエネルギーを弱めてはいけません。そんな事をしたら、よけい『なにオドオドしてるんだ?』という態度に出てきがちです。同じくらいのエネルギーというか、落ち着いた雰囲気は保っておきましょう。
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オススメの会話のネタ
相手の変化などを会話のネタに盛り上がるというのは、完全に第一段階と言えます。やはり、そればっかりでは会話を続けられない事も多いと思います。
第二段階では、またもっと別の切り口の会話のネタを題材に、話し相手がどんな人なのかというのに、さらに興味を持つようにしてみましょう。
社会への不満
例えば、タモリさんは最初に痩せたという話で盛り上がった人に、第二段階の話のネタとして、こんな感じの話題を振ったりします。
とか、そうやって、話し相手が社会に対して、不満を持ちそうな事を質問します。
こういう質問をすると、それが当たっていても、全く違っても、相手は生き生きと現状について語ってくれるはずです。
そして、こうした質問を通じて、会話の相手が『世の中に対して、どういう考えを持っている人なのか』というのをより深く理解できます。それによって、また新たな会話のネタが生まれていくのです。
スポーツ・音楽
スポーツや音楽というのも、その話題を通じて、相手の事を理解するのに良い話題ですし、応用が利きます。
例えば、『現在、体を鍛えている』というエピソードで第一段階として盛り上がった人に・・・?
という質問ができますよね。
そういう質問をすれば、例えば『最近は、ゴルフやってないんだ。』と返答が来ても、『何でやめちゃったの?』とか、『もったいない。今やれば、スコア上がってるよ。』とか、『じゃあ、何のために鍛えてるの?』と、様々な方向からの質問ができるようになります。
そして、その返答を聞く事で、相手がどんな人なのかというのが、より深くわかるはずです。また、同じく『現在、体を鍛えている』という人に、こんな質問もできますよね。
すると、その回答が『音楽は聞かない』とか、『○○の曲を聴いてて盛り上がる』とか、『○○っていうアプリを使って音楽を聴いている』と様々なパターンが考えられます。
特に最後のアプリに関する返答などがされた場合は、音楽の好みだけでなく『ガジェット好きな人』という相手の情報も分かってしまうのです。
すると、その人に対しては、『ガジェット』を会話のネタに出来る、という事がわかってしまうわけです。そうやって、会話のネタに困ったら、とりあえず、スポーツや音楽の質問を通じて、『相手という人を理解しよう』としてみてください。それを通じて、さらなる会話のネタが見つかるはずです。
占い
バカにしている人もいるかもしれませんが、占いも会話のネタとしてかなり有効です。
その理由は、占いの話題をすれば、嫌でも人間の内面について語る事になってしまうからです。例えば、相手が私は几帳面だからというような話をした場合、『やっぱり、血液型はA型?』と聞いてみたとします。
すると、『そうなんです。典型的なA型だから、整理整頓とか、時間厳守とか、そういうのが気になるんです。』とか、『いや、O型なんですけどね。普段は大概の事におおざっぱなのに、この件に関しては、なんか細かく色々気になってしまうんですよ。』という感じで、『その人が、どんな人物であるか』というのを詳細に語り出します。
タモリさんに至っては、テレホンショッキングのコーナーで、血液型占いなどの話題だけでなく・・・?
と、昔は、安産のお祈りまでしていましたね(笑)
『安産のお祈りをしてほしい!』という人は、なんらかの安産に対する不安があったり、心神深い一面があったりしするわけです。
そういうパーソナルな情報が、『安産への祈り』という話題を通じて相手の口から語られるわけです自分や相手が占いに全く興味がないというのなら、使わないほうが良いと思いますが、占いの話題は相手を知る上でかなり有効な手段です。
■しつこいですが、この本では、他にも77個のテクニックなど、数倍詳しく説明しています!
タモリ式会話術の注意点!
今までの説明で、タモリ式会話術を使うと、会話のネタに困らなくなるというイメージが湧いたと思います。ですが、ここで注意点があります。
タモリさんは、ダウンタウンや坂上忍さんなどのトーク術に比べるとマイルドな会話の切り口です。ですが、タモリさんも、あくまでもテレビを通じて『視聴者に見せる』のためのトークをしています。なので、一般の人が真似るべきでない部分などもあるので、気になる点を追加しておきます。
会話の話題 3大タブー
やはり、かなり相手の事を知っていたりしない限り、次の3つの話題は避けた方が無難だと思います。
個人への本気の悪口はNG
例えば、タモリさんは大橋巨泉さんの悪口などで、さんまさん、たけしさんとトークを盛り上げる事があります。ですが、一般の人は上司の悪口などで、場を盛り上げるのはやめておきましょう。
今回は、その仕組みの詳細は書きませんが、よっぽどトークスキルが高くない限り、誰かの悪口は損をする確率が高くなります。
もし、毒舌系が好きな人なら、『世の中への不満』、『テレビ番組への不満』、『自分の家族などへの不満』などにしておきましょう。
野球は十分危険な話題!
これは完全に危険とは言い切れませんが、野球の話題も、しない方が無難かもしれません。
野球の試合結果によって機嫌が悪くなる人というのが、一定数、世の中に存在しています。例えば、熱狂的阪神ファンで、巨人が大嫌いな関西人とかいますよね。
その人に、『最近、巨人が絶好調でマジで嬉しいと思いませんか?』と聞いたら、やっかいな展開になるのは火をみるより明らかです(笑)
スポーツの話題をする時は、どちらかというと観戦の話というよりは、会話をしている人が実際にプレーしているスポーツの話にしておいた方が無難です。
政治・宗教はやっぱり難しい
野球と同じように難しい話題が、政治や宗教です。
例えば、政治の世界には、数学の様な『正しい政策』というのがありません。誰かにとって良い政策でも、それによって損をしている人は必ずいます。もちろん、政治家相手に話をする時に、政治の話をしないわけにはいきませんよね。
でも、そんな状況は稀だと思いますので、なるべく、政治の話も避けておきましょう。実際、タモリさんも、あれだけ色々な話題についてコメントしている割には、政治については、ほとんど語りませんよね。
どうしてもネタが見つからない時は!?
今回紹介した、タモリ式会話術を使おうと思っても、慣れないうちは、うまく会話のネタが見つからないかもしれません。そうなってしまうと、焦ってしまって、相手の観察どころではなくなってしまう事もありますよね。
そういうピンチな状態になった時は、次に紹介する『木戸に立てかけし衣食住』という有名な言葉を思い出しましょう。
キ・・・気候・季節・気温
ド・・・道楽
ニ・・・ニュース
タ・・・旅
テ・・・天気・転職
カ・・・家庭
ケ・・・景気・健康
サ・・・酒
セ・・・セックス(大人の話)
シ・・・趣味
衣食住
どうしても、会話のネタに困った時は、とりあえず、この中の何かしらの話題について質問してみましょう。そして、タモリ式の『相手を知ろう!』という視点を生かして、それに続く会話のネタを探してみてください。
最終手段は、沈黙を楽しむ姿勢
最後に、最終手段の紹介です。もう、どうしようもないくらいに、盛り上がる会話のネタが無いっていう時も、無いとは言い切れません。
そういう場合は、『会話が盛り上がら無い原因は相手にある』と考えて、焦るのを止めてしまいましょう。実際、タモリさんにも、そういった状況が来る時もあります。
先ほども例に出した、能年玲奈ちゃんがテレホンショッキングのゲストだった時も、そんな瞬間がありました。
その時の、盛り上がる共通の会話のネタが無いと思ったタモリさんは、スタジオのお花を触りながら・・・?
と、言ってニヤニヤしながら、能年玲奈ちゃんとの沈黙を楽しんでいました。
本当におとなしい人っていうのが、少なからず、一定数存在します。そういう人に対して、過剰に質問すると、尋問の様に感じられてしまいます。
なので、そういう大人しい人が会話相手の場合は・・・? ちょっとニヤニヤする気持ちで『大人しい人ですね〜』みたいな心構えにしておくと良いでしょう。
まとめ
会話のネタに困った人は、会話の達人であるタモリさんのトークを参考にすると良い。会話のネタが見つからない人は、会話に目的意識がなく、相手を観察しておらず、色々な事に対する感心が薄い。
会話中に大切にすべき事は、『相手の変化』『正直である』『相手と同じくらいのエネルギーを保つ』の3つ。オススメの会話のネタは、『社会への不満』『スポーツ・音楽』『占い』。
注意点は、タブーな話題をしない事。そして、どうしても会話のネタが見つからない時は、『木戸に立てかけし衣食住』という言葉を思い出すか、沈黙を楽しむ。
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